「霧のマッカ岬」  53×27p 2008年 〈積丹町〉

 積丹のマッカ岬を、その付け根の断崖の小さな展望台から描き、何回か通ううちに、顔見知りもだんだん増えてきた。ここは、この辺りで一番見晴らしがよい所で、遠くの海まで見渡せる。漁師や、その妻、また、今はもう漁に出ない老人などが一日に何度となくやって来ては海を見る。落下防止用の柵にひょいと上り、遠くを見ては「朝より白波が立って来た。」「雨が来ると海が荒れる。」などと言っては帰る。

 薄暗くなり、そろそろ道具をかたづけようと思いながら、描きかけの画を見ていると、「まだできないか。」と、老人が声を掛けてくる。「いや、難しい。」と、私は答える。「あのマッカの先端の岩の間から朝日が上ってきれいだから、明日見に来たら良い。」と老人、私は朝日を描く心算はないが、せっかく声を掛けてもらったので、明朝早起きをして朝日の上るのを待っていたが、マッカから大分離れた所の水平線が明るくなり、そんな筈はないと思ったが、そこから日が上った。